麻雀にメタ戦略は存在しないのか

Mリーグ
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堀慎吾プロの発言

さすがの強さであっという間に鳳凰卓にやってきた現役雀王、堀慎吾プロがこんな発言をして物議を醸している。これに対して様々な意見が飛び交っている。人間の錯覚説、ツノダ陰謀論など色々あって面白い。

さて、この発言には2つの要素がある。

① 天鳳は(競技麻雀に比べて)聴牌スピードが速い
② ①の理由は天鳳が完全確率になっていないからではないか
今回の堀プロの発言に否定的な意見が多い天鳳TLだが、主に②について否定している人が多い印象だ。逆に言うと、①については肯定的な意見も多い。その理由の多くは、競技麻雀と天鳳では打ち方が違うから、というもの。
さて、本当にそうなのだろうか?
答えはおそらく、Yesだろう。
実際、天鳳の流行戦略は「ファースト聴牌至上主義」、それに対して競技麻雀は「打点至上主義」が流行している。打点をつくるためにはスピードは犠牲にされるので、両者の間では聴牌スピードが違うのは容易に推測できる。
では②についてはどうだろうか?
これについてはこう言うしかない。
「わかりません」
①については単純にファースト聴牌の巡目を比較すればいいので、証明する事は可能だろう。しかしその原因が前述した流行戦略の違いなのか、ツノダの陰謀なのかを証明するのは難しいだろう。
そして何より、もし天鳳の乱数がおかしかったとしても、そのおかしい乱数の元で全プレイヤーが打っている以上公平性は保たれているのだ。考えるだけ無駄、というやつだ。

麻雀にメタ戦略は存在するか

さて、ばっさり②について切り捨ててしまったが本題はここからだ。(前置きが長くて申し訳ない)
① 天鳳は(競技麻雀に比べて)聴牌スピードが速い
この理由は流行戦略の違いではないか、という推論を先ほど立てた。つまり、麻雀にはフィールドによって流行している戦略が存在する、という事だ。もしそれが事実であれば、
「流行している戦略に対して強い戦略(メタ戦略)を用いれば、流行戦略を使用している大多数の人間に対して優位を取れるのではないか」
という考察ができる。
例を挙げるなら、打点至上主義が流行している競技麻雀において、スピード重視の戦略を取って打点至上主義派が高い手を作る前にあがってしまえばいい、という考え方だ。
しかし、残念な事にこれを実現するのは現状難しいと言わざるを得ない。
これを証明してくれたのが、Mリーグだ。

打点重視な選手の活躍

Mリーグは競技麻雀同様、打点至上主義が流行している。これを象徴するのが、近藤誠一選手黒沢咲選手だ。二人の特徴は何といっても打点力。今シーズン、近藤選手は平均打点8047点(リーグ2位)、黒沢選手は平均打点7901点(リーグ3位)ととんでもない数値を叩き出している。
そしてこの二人にはもう一つ共通点がある。それは、2年連続で好成績を残していることだ。
近藤選手は昨シーズン+144.4pt、今シーズン+332pt。黒沢選手は昨シーズン+116.9pt、今シーズン+150.5pt。この2年間、二人の大物手は猛威を振るったと言えるだろう。
そしてもう一人、興味深いデータを提供してくれた打ち手がいる。今シーズンのMVP、魚谷侑未選手だ。
今シーズンの魚谷選手が+451.4ptという圧巻の成績を叩き出したのは皆さんご存知の通りだろう。では、魚谷選手の平均打点が、8210点と近藤黒沢両選手を抑えてのリーグ1位だった事はご存じだろうか。
魚谷選手と言えば、「最速マーメイド」と呼ばれ、打点よりもスピードを重視する打ち手のイメージが強い。実際、昨シーズンの魚谷選手は平均打点6110点で21人中15位と全く打点重視の打ち方ではなかった。しかし今シーズン、その打ち方を大きく打点重視に変えた結果、-249.1ptと奮わなかった昨シーズンから大きく成績を伸ばした。
もちろん1シーズンの成績では「ただついていただけ」という可能性もあるが、近藤黒沢両選手のデータを合わせて、
打点至上主義の流行の中で、打点力が持ち味の選手が勝っている
という事実が浮かび上がってくる。

スピード重視なチームの低迷

さて、では打点至上主義の流行の中でスピード重視の選手の成績はどうだろうか。現在のMリーグにおいて、スピード重視の打ち手はあるチームに固まっている。
そう、U-NEXT Piratesだ。
PiratesはMリーグの中でかなり特徴的なチームだ。ロボ小林剛、黒いデジタル石橋伸洋、W天鳳位朝倉康心、天鳳出身女流瑞原明奈と、明確に打点よりスピードに特徴のある選手を揃えている。このため、スピード重視の打ち手の多い天鳳プレイヤーから最も人気のあるチームだ。
さて、そんなPiratesの2シーズンの成績はどうだっただろうか。
レギュラーシーズンの成績は、昨シーズン-99.2pt(5位)、今シーズンー202.3pt(6位)と2年連続でマイナス。Mリーグで唯一のスピード重視チームは、現在の所苦戦を強いられていると言わざるを得ないだろう。

考察

以上のMリーグの分析から、麻雀の戦略について一つの考察ができる。それは、

「流行戦略のメタ戦略は、より洗練された流行戦略である」

というものだ。つまり、流行戦略を駆逐できるようなメタ戦略の存在は見えてこない。理由として、以下の2点が考えられる。

①麻雀は4人でやるゲームなので、1人だけメタ戦略を用いてもメタにならない
②メタ戦略を用いるより、流行戦術の深堀りに重きを置くプレイヤーが多い
①も重要な要素だと思うが、私は大きな理由は②にあると考えている。流行戦略に対するメタ戦略が存在しないというより、現状これについて考える人がいないのだ。
現在麻雀の研究といえば、数理的シミュレーションに関するものが多い。今回考察したメタ戦略のような、ゲーム理論的な研究はほとんどされていないのが現状だ。
逆に言えば、研究さえされれば、メタ戦略が存在する可能性は十分にあるはずなのだ。
一つ、私が最近天鳳で用いているメタ戦略を紹介しよう。
最近の天鳳の特徴として、「参加率が高いプレイヤーが多い」というものがある。参加率とは、副露率とリーチ率の合計だ。「ベタオリしない確率」と言い換えてもいい。これに対して、私は「ベタオリする確率を高くする」メタ戦略を取っている。理由は、参加率が高いプレイヤーが多いという事は、「流局率が低く、横移動率が高い」ため、「ベタオリによる期待損失が低い」と見積もる事ができるからだ。
これはおそらく、そこそこ有効な戦略だ(と私は感じている)。しかし、前述した通りこういった観点の議論はほとんど見たことがない。また、私はゲーム理論の専門家ではないので、この戦略が有効かどうかの検証も難しい。
今後の麻雀業界において、数理的シミュレーションと並行してこういったゲーム理論的研究も行われれば、より麻雀というゲームは面白くなるのではないだろうか。

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